Saturday, August 12, 2006

カッテな感想文:音楽篇

ヴァイナルやCDを買っても、初めて聴く時はちゃんと気を入れて聴きたいので、なかなか聴く時間が取れません。音楽だけに限らず、人の創ったものに正面から向き合うっていうのは、体力を使うし、なかなか疲れるものなのです。
そんなわけで数ヶ月前に買ってはいたけど、今日初めて聴いた音楽のことでもちょっと書いてみようかと思います。

東京の恋人 | 豊田道倫 (Weather/Headz)

前作『Sing A Song』とは打って変わって、全9曲、トータル35分ほどの作品。大作もいいけれど、やっぱり私はLP1枚分くらいのサクッと聴けるこのくらいのアルバムが好きなんだなと、感じた1枚だった。
最近はどちらかというと弾き語りで、ヘヴィな雰囲気のものが多かった豊田の作品だが、このアルバムでは1曲目の"新宿"から、バンドサウンドで彼のポップネスが爆発したような音を鳴らしている。
アルバムのほぼ全篇に渡って感じることだが、近年ではECDとも一緒にやっていた久下惠生のドラムスが非常にいい。豊田のヘヴィネスとポップネスとをちょうどいいバランスに保つ役割を果たしているような気がする。

2曲目の"うなぎデート"、30を過ぎてこんなウキウキするようなアマアマのラヴソングが書ける豊田には、まったく目眩がしてくる。続いて3曲目の"いい湯〜YOU〜だな"と、4曲目"恋ヶ窪"、ラヴソングばかりでとてもいい。どうしようもない恋の歌は多いけど、こんなに素敵ないいラヴソングもあるんだと思うと、なんだか嬉しくなる。
この辺りからバンドサウンドで通してくるかと思ったアルバムが、少し様相を変化させてくる。4曲目に至っては早くも弾き語りだ。やはりこの辺りがパラダイス・ガラージ名義の作品ではない所以だろうか。

そして5曲目"RIVER"、豊田の得意のモチーフである川が出てくるこの曲もまたラヴソング。最早バンドサウンドはなりを潜め、豊田のギターとボーカル、久下のドラムスとDr.kyOnが鳴らすキーボードの変則スリーピースだ。音だけで、これほどまでに情景を思い起こさせるような曲はそんなにない。僕は君が好きだ、じゃなくて「君は僕を好きか/僕は君を好きか」。浮かれていない、生活に寄り添うようなラヴソング、それだけに生々しい表現だと思う。
続いて"長い手紙"、5曲目から一変して突然豊田のヘヴィネスが爆発している。布団の上でもんどり打つ30代が鳴らすロックンロール。こういう30代は信用できる、そんなことを考える。

アルバムも終盤"グッバイ・メロディー"、豊田の書くメロディはどうしてこんなにも、どうしようもないくらい綺麗なんだろうか。宇波拓のピアノが、そしてまた久下のドラムスが、豊田の歌声に寄り添う。
"35の夜"、やっぱりロックはおもしろい。やっぱりエレキギターの音はおもしろい。そんなことを感じる曲だ。たった4行の歌詞しかない曲なのに、非常に雄弁に語っている。
最後の曲はアルバムタイトルにもなっている"東京の恋人"。本当に綺麗なアルバムの幕引き。向島ゆり子のヴァイオリンと川本真琴のボーカルで、気をしっかり持たないと涙腺が緩みそうになる。

冒頭にも書いたが、短くてサッと聴けるし、それだけに豊田道倫のいいところが凝縮されている良いアルバムだった。2000年にパラダイス・ガラージ名義で発表された『愛情』辺りの作品を思い起こさせる。
こういう音を鳴らす人がいる限り、私はロックを、音楽を好きで居続けられるんだろうな。

このアルバムが出たのが去年の12月、今年の6月に彼はライヴ盤と初期の音源をまとめたアルバムを出しているのですが、それらはまだ聴けていません。買おう買おうと思っているうちに早くもふた月経ってますよ。
いやほんと、歳をとる度に時間の加速を感じる今日この頃です。このままじゃいい加減ヤバいです。気がついたら死んじゃいますよ、ほんとに。
それじゃ、また!



sexy 豊田道倫_パラダイス・ガラージ_hp
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